「経済からの視点」から温暖化論(気候変動)についての分かりやすい記事がありました。
この記事を起点に今後導入されるであろうカーボンタックスの使い道について考えてみたいと思います。
(転載開始)
〇問われる気候変動への対応――「炭素価格」想定した行動を
2022/12/05 日経MJ(流通新聞)
一昨年の10月に、当時の菅義偉首相が2050年にカーボンニュートラルを目指す目標を提示してから、日本では気候変動問題への対応が、政策としての重要度を増している。
岸田内閣の下でも、気候変動対策について、さらに踏み込んだ政策が議論されている。気候変動問題の展開は今後の企業の業績にも大きな影響を及ぼすものである。
一言で言えば、気候変動対応に背を向ける企業は生き残ることが難しくなるということだ。そうした流れを理解する上で、「カーボンプライス」という概念が重要な意味を持つ。
気候変動問題は、壮大な規模での市場の失敗である。
人々の経済活動が温暖化ガス排出という外部効果の社会的な費用を無視して行われてきたので、気候変動問題という市場の失敗が起きている。
その加害者は200年以上前の産業革命以来の全人類であり、その被害は今後の世代の人々にまで及ぶ。まさに壮大な規模の市場の失敗である。
こうした問題を、政府の規制や企業による自主的な対応だけで解消することは不可能である。
全ての人々の行動変容と社会の構造変化を伴う大きな調整が求められる。それを実現できるものがあるとすれば、それは市場の力しかない。市場の失敗は市場の力で解決するしかない。
解決のための市場メカニズムでは、温暖化ガスの社会的費用を織り込んだカーボンプライスが鍵となる。
温暖化ガスの社会的費用が無視されてきたので社会全体にとって好ましくないレベルの温暖化ガスが排出されてきた。
全ての人や企業が社会的費用を考慮に入れた価格が成立していたら、温暖化ガスの排出も抑制されるだろう。
社会的費用も反映したカーボンプライスの典型的な例が、カーボンタックス(炭素税)である。
炭素を排出することに税が課されれば、全ての人の行動は炭素税を反映したものになるだろう。カーボンプライスは炭素税だけではない。
排出量を制限しながら、排出枠を取引する制度でも、その結果としてカーボンプライスが形成される。
いずれにしても、全ての人や企業の行動変容を起こすためには、社会全体にこうしたカーボンプライスを浸透させていく必要がある。
ただ、いきなり極端に高いカーボンプライスを付けるのは現実的ではない。低い水準から始めて、少しずつ引き上げていくことが現実的となる。
将来のカーボンプライスが高くなることが想定されるなら、企業もできるだけ早く脱炭素の対応を進めようとするだろう。
将来の適正なカーボンプライスに向けて徐々に引き上げていく流れが求められる。
個々の企業の視点に立てば、このようなカーボンプライスの推移を想定した行動が求められるということだ。
先に、「気候変動対応に背を向ける企業は生き残れない」と述べたが、別の言い方に置き換えれば、気候変動問題の流れを読んで行動することがビジネスチャンスを提供することになる。
今後のカーボンプライスがどう推移するのか、アンテナを高くしてほしい。
(転載終了)
まとめると、
1、気候変動問題は、壮大な規模での市場の失敗。
2、市場の失敗は市場の力で解決するしかない。
3、解決のための市場メカニズムでは、温暖化ガスの社会的費用を織り込んだカーボンプライス{カーボンタックス(炭素税)、排出枠を取引する制度}が鍵。
4、気候変動対応に背を向ける企業は生き残ることが難しくなる。気候変動問題の流れを読んで行動することがビジネスチャンス。
『資本主義が気候変動問題の主因で、その解決策は、カーボンプライスにある』ということ。
エスカルジュニアは、経済学者でも、環境学者でもなく、大企業の資本家でも為政者でもない。
何の組織にも属さない、消費者、生活者の立場で、疑問、提案をしてみたい。
まずは、疑問。
「1、気候変動問題は、壮大な規模での市場の失敗」について。
・森林から農地への転用や、農業、牧畜によるメタン排出など産業革命以前から発生している。また、現在でもこれら農耕牧畜由来の温室効果ガスは、先進国以外からも発生している。産業革命以降の資本主義(市場)のみが責められるかはどうかは不明なのでは?
・カーボン(二酸化炭素)以外の、水蒸気・メタン・フロン等の影響の方がカーボンよりも大きい可能性はないのか?
・そもそも自然活動による気候変動なのでは?
・気候変動の犯人は、産業革命後の市場だけとは限らず、主犯が別にいるかもしれないのでは?
「2、市場の失敗は市場の力で解決するしかない」について。
・市場の力で本当に解決できるのか?
・人の目には見えない空気が原因となる気候変動において、全ての排出源について、早期に特定し、「内部化」することは本当に可能なのか?
(水蒸気、牛のげっぷ、人口問題、ごみからのメタンガス等)
「3、カーボンプライスが鍵」について。
・カーボンプライスは本当に有効なのか?
・カーボンプライスは早期に気候変動を止められるのか?
・地域・世界全体で同じ基準・同じ額で導入しないとタックス・ヘイブンのように抜け道ができてしまうのでは?
・地域・世界で歩調をそろえる必要があると思うが、可能なのか?
・かえってブロック化が起こり、市場が分断される危険性があるのでは?
「4、気候変動対応に背を向ける企業は生き残ることが難しくなる。気候変動問題の流れを読んで行動することがビジネスチャンス」について。
・新たな資本主義の儲けのフィールドづくりであり、政府にとっては、新たな収入のフィールドでは?
・新たなビジネスに伴い、スクラップ&ビルドが起こり、カーボン発生をより加速させてしまうのでは?
・対応可能な巨大資本のみが生き残るといった結果にならないか?
もちろん、化石燃料を原動力に成長してきた資本主義が短期間の間にカーボンを大きく排出、有限な化石燃料を含む資源の持続可能性を度外視してきたことは、資本主義(市場)の修正事案の1つであると思う。
同時に、カーボンプライスにより、これまでの資本主義で抜け落ちていた「外部効果」を「内部化」するという名目で、閉塞している資本主義に新たな開拓地をつくり、そこから国も税収が得られることになるという思惑もみえる。
こうした疑問はあるものの、『カーボンゼロをやらない未来』より『カーボンゼロをやる未来』の方が、持続可能性は高いはず。
たとえ、気候変動を抑え込むことが十分できなくても、少なくとも現在の利用過多な化石資源を将来世代へ残しておくという点では、持続可能性を高めると思う。
そして、世界・国が2050年カーボン・ニュートラルへ進むと決めた以上、カーボンプライシング(炭素税・排出権取引)に向かっていくだろう。
そこで、提案してみたいと思う。
気候変動が産業革命後の人間活動由来ならば、鍵は、カーボンプライスだけでなく、『人口減少』、『脱成長』、『脱化石エネルギー・太陽エネルギー利用への技術革新(産業革命)』が必要だと思う。
さて、この新しい仕組み(カーボンプライス)のコストを背負うのは誰か?
企業?
企業ならば、株主?資本家?企業利益から?従業員の給与から?商品価格に転嫁?
おそらく(現在から未来の)消費者が多くのコストを背負うことになるのでは?
また、この新しい仕組みのコストを(現在から未来の)消費者が背負わなければ、別のコスト(気候変動対策なしによる被害)を負うのも、また消費者になるかも。
どちらにしても弱者は、消費者。
日本は、2050年のカーボン・ニュートラルを世界にあわせ表明している。
カーボンタックスを取り入れるということは、増税だ。
カーボンタックス(炭素税・排出枠取引制度)の税収の使い道は、技術革新へ向けるのと同時に、脱成長に伴う痛みへの対応のために弱者である消費者に還元していくことも検討できるのでは。
なので、エスカルジュニアは、カーボンタックスを導入後、技術革新への投資に加え、その使い道の1つを、ベーシック・インカムの原資にすることを提案していきたい。
『カーボンタックスの使い道⇒太陽エネルギー利用への技術革新(産業革命)+ベーシック・インカム』
もっとシンプルにいうと
この『ベーシック・インカム市場+ベーシック・インカム』の財源にカーボンタックス(炭素税・排出枠取引制度)をあてる。
この方法は、市場の失敗を内部化し、市場の力で解決することともいえる。
しかも、内部化できるのが、『気候変動』だけでなく、他の様々な『外部効果』も内部化できる。
また、『気候変動』の被害が及ぶ、今後の世代の人々にも有効となる。
『産業革命』と同時に『社会の構造改革』だ。
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